HOME > パニック障害の治療

パニック障害の治療内容、進め方、治療期間などについて

パニック障害の治療は、薬物療法精神療法を併用しながら進めていきます。それぞれの療法の中にはいろいろな種類があって、治療の進みぐあいに応じてアレンジしていきます。

では、パニック障害の治療の進め方、治療期間、薬物療法、精神療法などについて、わかりやすくお伝えします。

※ 個々の治療方法について詳しくは → 治療内容の目次へ >>

スポンサーリンク

【目次】

1.治療を受ける前の心構え

パニック障害は治療を始めればすぐに良くなるというものではありません。そこで、パニック障害の治療を受ける前に注意すべき点を紹介します。

(1) 医師を信頼しよう

治療は医師と患者さんの二人三脚でおこなうもの。自分でもパニック障害について勉強して知識を持ったうえで、医師の話でわからないことはすぐに確認する、自分のことはありのまま話す、あせらずに医師とじっくり治療に取り組む、という姿勢が大切です。

(2) 医師の指示に従おう

今はインターネットで簡単に情報が手に入ります。だからといって、その情報をうのみにしてはいけません。

薬を飲み始めてよくなったから、あまり効かないから、といって、勝手に飲む量を変えたり飲むのをやめたりすることなく、必ず医師と相談して、指示に従うようにしましょう。

(3) 良くなった面を見て、前向きに治療を進めよう

パニック障害は、一進一退を繰り返しながら治癒に向かっていきます。症状が悪くなったり改善が見られないと、落ち込んだりあせってしまうこともあるでしょう。

そんな時は、「この症状はよくなった」、「こんなことができるようになった」とよくなった面を見てください。治療の効果を再確認すれば、治癒へと向かっていることが実感できて、気持ちも落ち着きます。

治療を受ける前の心構え  くわしくは >>

スポンサーリンク

2.治療の進め方と期間

(1) 治療の進め方

医師の診察

パニック障害の治療は 「問診 → 体の検査 → 治療方針の決定 → 薬物療法と精神療法による治療開始」 という進め方でおこなわれます。

まずは問診

心や体の症状、悩み、ストレス、普段の生活の様子、仕事、病歴、家族の病歴、などについて話をします。

初対面の医師との問診は緊張もするでしょうから、2回目、3回目と重ねることに自分を知ってもらいながら、医師との信頼関係を高めていきましょう。

次に体の検査

パニック障害と似ている症状が出ていても、別の病気である可能性もあります。パニック障害であると診断するためは「体の異常が原因ではないこと」が前提。症状が体の病気や薬物の中毒からくる症状ではないことを確認するために、体の検査がおこなわれます。

そして治療方針の決定

問診や体の検査をもとに、現在の体の症状、心の状態、生活環境などをふまえて、治療方針を決定していきます。

治療は、薬物療法と精神療法を組み合わせるのが一般的。改善の度合いなどをみながら薬の種類を変えていったり、ほかの精神療法を取り入れたりと、アレンジしながら治療を進めていきます。

ここから治療がスタートです。

治療は、薬によって体の症状(発作)や不安な気持ちをやわらげる「薬物療法」と、医師との対話を通して不安や恐怖を感じやすい気持ち(考え方、とらえ方)を修正していく「精神療法」の2つを組み合わせながら進めていきます。

(2)治療期間

治療期間は症状の重さによって個人差はありますので、目安を紹介します。

  • 薬物療法を始めて、3~4週間でパニック発作が軽くなる
  • 広場恐怖がある人には、パニック発作がおさまった頃から精神療法を併用する
  • 2ヶ月ほどで、予期不安が徐々に軽くなる
  • 3ヶ月ほどで、パニック発作がなくなる
  • 6ヶ月~1年で、予期不安がほとんどなくなる
  • 1年~1年半ほど薬物療法を続け、徐々に薬を減らして最終的には薬をやめる

症状が早くおさまれば、薬を減らしはじめる時期も早まります。上記の治療期間はあくまでも目安として参考にしてください。

治療の進め方と期間  くわしくは >>

スポンサーリンク

3.パニック障害の薬物療法

パニック障害の治療は、「薬物療法」 と 「精神療法(認知行動療法など)」 の二本柱でおこなわれます。

パニック障害の治療

そして薬物療法で使われるのは主に 「抗うつ薬」 と 「抗不安薬」 の2種類。症状や改善状態によって飲む量や薬の組み合わせを調整しながら、治療を進めていくことが多いようです。

4.パニック障害の精神療法

パニック障害の精神療法

パニック障害の治療では、「薬物治療」 と一緒に 「精神療法」 もおこなうのが一般的です。

精神療法とは、薬を使わずに、自分の思っていることを伝えたり医師の話を聞いたりといった「対話」を通して治療すること。

では精神療法について、いくつか具体的な方法を紹介します。

精神療法(1)支持的精神療法

不安な気持ちの女性

患者さんは不安や悲観な思いと毎日戦っています。

「私は必要とされているのかしら?(無価値感)」、「今までやってきたことはムダだったの?」、「将来どうなっちゃうの?」といったような不安です。

支持的精神療法は、このような状態から患者さんを解き放つための治療。否定ではなく肯定し共感することから始めていきます。患者さんの思いをありのままに受け止めて、患者さんの存在そのものから認めて支えていく治療法です。

患者の思いに共感し、じっくりと耳を傾ける

パニック障害の支持的精神療法

そして、患者さんの話すことにをしっかりと聞きます。

人は、話を聞いてもらうだけで心がホッとするもの。医師がただしっかりと話を聞いてくれるだけで、信頼感が増してきます。

その話を聞いて、適切な質問などをしながら患者さんとの相互の理解を深めていきます。信頼感が増すだけでなく、医師にとっても患者さんのことをよく知ることができるでしょう。

こうして見てみると、支持的精神療法とは、「今から始めますね」という治療ではなく、普段の診察での会話自体が支持的精神療法となっているといえます。

言いかえれば、普段の診察や会話が支持的精神療法となっている医師と一緒に治療に取り組むことが、早期改善にもっとも欠かせない点ではないでしょうか。

スポンサーリンク

精神療法(2)精神分析療法

精神分析療法は、治療というよりも患者さんが心にダメージを受けた原因を分析する方法。患者さんの“無意識”に着目した治療法となります。

過去にさかのぼって原因をつきとめる

パニック障害の精神分析療法の自由連想法

精神分析療法では「自由連想法」という技法が使われます。

医師やカウンセラーと患者さんとで1対1になります。イスにゆったりと座って、患者さんは自由に思い浮かんだものを話していきます

医師やカウンセラーは適切な質問をして、より深く堀りさげながら患者さんの過去へさかのぼって、心にダメージを受けることになった原因をさぐっていきます。

週に1回などの頻度でくりかえしながら、医師がトラウマに気づくこともあれば、患者さん自身が自分で気づくことも。そのトラウマの内容に合わせた治療をしていきます。

脳は忘れても体は覚えている

パニック障害の精神分析療法

パニック障害をはじめとする精神障害は、幼少期に負ったトラウマが原因となっていることも少なくありません。

人間の脳は悪いことは忘れようしますので、そのできごとを頭では意識していないし思い出すこともできません。でも、体の細胞は記憶しています。

つまり、体は覚えているけれども脳は覚えていない。このようなケースで精神分析療法が効果を発揮します。

その他デメリットなど、精神分析療法についてくわしくは >>

精神療法(3)森田療法

森田療法は、日本人の森田正馬さんが考案した精神療法。パニック障害に効果的な治療であるとともに、高所恐怖症、強迫神経症、対人不安症などにも効果がある治療法とされています。

「あるがままに生きる」

森田療法の基本は「あるがままに生きる」。これは「目的本位に行動をする」ということです。

例えば、夏休みの宿題。

森田療法の気分本位と目的本位

「今は遊びたいから遊んじゃえ!」、「後でやればいいや!」としているうちに8月も終わりに。あわてて宿題に追われた経験ありませんか?

これは「気分本位」。宿題が残っているのはわかっていても、遊びたいから遊ぶ。気分を優先するものですね。

森田療法は「気分本位」ではなく「目的本位」。「気分ではなく行動する」。

やる気になったら始めよう、ではなく、とにかく始める。読書感想文がイヤなら漢字ドリルでもなんでも始めるのです。

「宿題をやらなければならない」という目的を重視して、その時の気分は無視。「とにかく行動に移す」ことを重要視するのが森田療法の考え方です。

緊張や不安があってもいい

森田療法では、緊張や不安を 「よし」 としています。

おおぜいの前でのスピーチや大事なプレゼンなど、緊張や不安を感じるのは当然。この時に 「緊張をしずめよう」、「不安な気持ちをなくさなきゃ!」とがんばればがんばるほど、緊張も不安も強くなっていきます。

森田療法では、その緊張や不安があることが自然で、悪いことでもなんでもない、と考えます。そして緊張や不安(=気分)があっても「それでよし」として、スピーチやプレゼンをしっかりやること(=目的)に集中する、というものです。

森田療法のポイントは、「誰にでもできる」ということです。「気持ちを無視して、やらなければならない」というルールに沿って行動することで、建設的な考えができるようになって、パニック障害などの改善にもつながっていきます。

森田療法 くわしくは >>

スポンサーリンク

精神療法(4)認知行動療法

認知行動療法は 「認知 (思いこみ、とらえ方、考え、学習)」 の誤りが予期不安や広場恐怖を引き起こすと考えて、その認知を修正していく精神療法です。

電車に乗るのが怖いケースを例にあげて説明します。

例)電車に乗るのがこわいケース

電車に乗るのが怖い女性

電車に乗っていたら発作が起きた。すると、

「電車に乗ったから発作が起きたんだわ!」

と思いがちですよね。

パニック障害は場所や状況との因果関係はないのに、「電車=パニック発作」というように関連づけてしまう(これが認知の誤り)。

こうして「電車に乗って、また発作が起きたらどうしよう・・・」と予期不安がわきあがって、電車を避けるようになるという広場恐怖が生じていくのです。

この「電車=パニック発作」という間違った理解を修正していくのが、認知行動療法です。

認知行動療法の進め方

認知行動療法の進め方で、広場恐怖の改善に効果的であるということで広く使われているのが「暴露療法」。患者さんが不安や恐怖を感じる場所に少しずつ慣らしていって、不安や恐怖を取り除いていくものです。

具体的な進め方は・・・

  • パニック発作や予期不安や広場恐怖が起こるしくみ、認知行動療法の効果を学ぶ。
  • 毎日の自分の状態を記録する。(いつどんな状況で発作が起きた?その時の症状は?)
  • 呼吸法や自律訓練法といったリラックス法を練習する。
  • 自分の体の感覚を必要以上に悪くとらえていないかを検討する
  • 不安や恐怖を感じる場所に実際に行って、少しずつ慣らす(誤った認知を修正する)

1から4までは特に問題なく進めることでしょう。問題なのは、5.の「不安や恐怖を感じる場所に実際に行って、少しずつ慣らす(=暴露療法と呼ばれています)」。この暴露療法の具体的な進め方を「電車がこわいケース」を例に紹介します。

暴露療法の進め方(電車が怖いケース)

パニック障害の暴露療法で最初は家族と一緒にでかける女性

無理せずに少しずつ慣らしていくのが一般的。たとえば・・・

  • 家族と一緒に駅のホームまで行く(電車は乗らない)
  • 家族と一緒に各駅停車に1駅乗る
  • 家族と一緒に各駅停車に2駅乗る
  • 一人で各駅停車に1駅乗る
  • 一人で各駅停車に2駅乗る
  • 一人で急行に1駅乗る
  • 一人で特急に1駅乗る
  • 一人で特急に2駅乗る

あくまでも目安ですが、このように少しずつハードルを上げていきます。

「母と一緒なら各駅停車で3駅でも大丈夫!」、「特急に乗っても1駅なら発作は出なかったわ」 というように、発作が起こらずに大丈夫だったことを都度確認して、次のステップへと進んでいきます。

そして最終的に、「電車に乗っても発作は起きないわ!あの時はたまたまだったのね。」と電車と発作は関係なかったことを理解する(認知の修正)ことで、広場恐怖をクリアしていきます。

認知行動療法  くわしくは >>

スポンサーリンク

精神療法(5)自律訓練法

予期不安や広場恐怖などの症状をやわらげる精神療法としてドイツの医師シュルツ氏が考え出したのが 『自律訓練法』。不安を取り除くリラックス方法です。

短期間で習得しやすくてリラックス効果も高いことから、治療の現場だけでなく、スポーツ選手やビジネスマンのメンタルトレーニングなど、幅広く利用されています。

第1段階から第6段階、そして消去動作、全部で7つのステップで構成されています。

自律訓練法のやり方

パニック障害の自律訓練法で仰向けになる女性

自律訓練法は、暑くもなく寒くもなく、静かでリラックスできる場所でおこないます。ゆったりとした服装で、あお向けになって寝て、両腕と両足を少し開いて体から離します。手の指は力を抜いて曲がっている状態にしましょう。そしてゆったりと軽く目をつむります。これで準備は完了です。

第一段階:手足が重たい

『気持ちがとても落ち着いている』と心の中で自分自身に言い含めます。波の音が聞こえる夕べの海や高原などおだやかな気持ちになれるシーンをイメージ。雑念が出てきそうになったら、『自分は今、気持ちがとても落ち着いている』と何度も心の中でつぶやきましょう。

気持ちがやわらいできたら、手足の重さを感じる作業に入ります。

まず自分の利き腕に意識を集中させて『利き腕が重たい』と心の中でつぶやきます。本当に利き腕が重く感じるまでそれを続けましょう。手足を重たいと感じるには手足の力を最大限に抜くことがポイント。必死に重たくしようとせずに、自然と重たく感じるまで待ちましょう。

利き腕が重たいと感じるようになったら、利き腕とは逆の腕 → 右足 → 左足 という順番で同じように『重たい』と心の中で念じましょう。そして、手足が完全に重たいと感じるようになるまで待ちます。

自律訓練法を始めて、すぐにできるわけではありません。1ヶ月たっても手や足の重さを感じることができない人も。自律訓練法の目的はリラックス。必死になったり焦ることなく、安心して続けましょう。

第二段階:手足が温かい

次は、手足が温かいと感じる作業。

これも利き腕からです。『利き腕が温かい』と心の中でつぶやきます。じわじわと温まるようなイメージをしてみましょう。そして、利き腕に温かさが感じられるようになったら、利き腕とは逆の腕 → 右足 → 左足……という流れで温かさを得ていきます。

締めは必ず消去動作を

第一段階、第二段階の動作によって、心身ともに非常に強いリラックス状態になっています。このままではボーッとしてしまうことがあるので、必ず消去動作をおこないましょう。

やり方は、両手をグーにしたりパーにしたりを数回くり返し、そのあと“ぐーっ”と大きく伸びをする。そして、最後に深呼吸をおこなって終了です。

消去動作は、自律訓練法を途中で終了する時や途中で寝てしまった時にもおこないます。

ここまでが、自分でできる自律訓練法のやり方。

この先の第三段階、第四段階、第五段階、第六段階については、医師などの指導のもとでおこないます。ただ、第二段階までしかおこなわないから効果がない、ということはありませんから安心してください。

自律訓練法をおこなうと、緊張状態から解き放たれて深いリラックス状態に。その効果は心にも体にもあらわれます。

スポンサーリンク

心への効果

自律訓練法

  • 気持ちがおだやかに平安になる
  • イライラした気分が消える
  • ストレスに強くなる
  • 集中力が高まる
  • 心にゆとりが生まれて、生活を見直すことができる

体への効果

  • 体が温まる(体内酵素や新陳代謝が活発に)
  • 血行がよくなる
  • 血圧が安定する
  • 疲労回復が進む
  • 副交感神経が活性化して、体の回復が進む

リラックスすることは、実は気分的なものだけでなく、体と心の健康を維持するためのもっとも大切なポイント。リラックス状態が作れるようになれば、あらゆる不調の回復に飛躍的な効果をもたらします。すべての人にとって有効な方法と言えるでしょう。

自律訓練法 くわしくは >>

※参考サイト:厚生労働省 e-ヘルスネット「認知行動療法」、「自律訓練法」、「パニック障害」、NHK健康チャンネル「心のリラックスでストレス解消 - 認知行動療法で考え方を見直す」、「自律訓練法のポイント」、国立精神・神経医療研究センター~こころの情報サイト「不安症

*-*-*-*-*

以上、パニック障害の治療の概要についてお伝えしました。

信頼できる医師と一緒に、治療方針に納得したうえで進めていくことが、早く改善するためにもっとも大切。不安なこと、気になることはしっかりと医師に伝えながら治療を進めていきましょう。

スポンサーリンク

パニック障害の治療の内容一覧

パニック障害への対策の方法

トップへ