【目次】
- パニック障害とは?
- 症状(パニック発作、予期不安、広場恐怖)
- 原因(神経伝達物質、ストレス、遺伝、疲労、カフェイン)
- 検査の内容(何科?医師の選び方は?どんな検査?)
- 治療(薬物療法、精神療法)
- 改善するための生活のしかた
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パニック障害とは
パニック障害とは、地下鉄、飛行機、車、高速道路など、逃げ場のない場所にいる時に、急に、動悸・めまい・息苦しさなどを感じて「このまま倒れるのでは?」「おかしくなっちゃうのでは?」と強い不安にかられて、パニック状態になること。
病院で検査をしても特に異常はみられません。
しかし本人にとっては「またあの状態になるのでは?」という不安から、電車などに乗れなくなることがあります。また電車に乗った時に、同じようなの不安から、パニック障害の症状(発作)が出やすくなってしまいます。
精神疾患とパニック障害の関係
パニック障害の症状や原因を説明する前に、まずは、心の病のなかのパニック障害の位置づけを説明します。
現代はストレス社会。不安障害、統合失調症、摂食障害、適応障害など、さまざまな心の病が増えています。これらの名前を耳にすることも多いことでしょう。
そんな心の病の中でパニック障害の位置づけはどこになるのでしょうか?
パニック障害は、「心の病(精神疾患)」の中の「不安障害」の中に含まれます。
不安障害には、パニック障害のほかに社会不安障害や全般性不安障害などがあります。
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パニック障害の症状
パニック障害による症状は、次の3つに大きく分けられます。
では、まずは「1)パニック発作」について説明していきます。
1)パニック発作
パニック発作は、さらに3つの種類に分けられます。
- 状況依存性パニック発作
- 状況準備性パニック発作
- 予期しないパニック発作
この3種類のそれぞれの特徴を説明してから、具体的な症状を紹介します。
1.状況依存性パニック発作
これは決まった状況でいつも起こるもの。たとえば、会議で報告することに強い不安を感じる人の場合、会議で報告をする時にはいつもかならず発作が起こる、というものです。
また実際にその状況にならなくても、「明日は会議で報告かぁ」と考えただけで発作が起こることもあります。
2.状況準備性パニック発作
これは先ほどの状況依存性のものとは違って、決まった状況で必ず発作が起こるのではなく、起こらない時もある、というもの。たとえば、エレベーターに乗ると発作が起きやすいが、エレベーターに乗っても起きないこともある、ということです。
3.予期しないパニック発作
これはなんのきっかけもなく突然起こるもの。
(1)や(2)のように「この状況だと起こりやすいかも」といった予想もできずに、どんな状況であっても起こる可能性がある発作のことです。夜寝ている時に急に目が覚めて、この発作が起こることもあります。
そもそも、この「予期しないパニック発作」が起こることがパニック障害である条件となっていますので、この発作がくりかえし起こる傾向があります。
パニック発作の具体的な症状
具体的な症状には、次のようなものがあります
- 動悸
- 息苦しい、呼吸ができない
- めまい、ふらつき
- 発汗・冷や汗がでる
- 吐き気、お腹の不快感
- 非現実感、離人感
- 手足が震える
- 胸の痛み、胸の不快感
- 発狂・おかしくなる不安感
- 窒息感、息が吸えない
- 感覚が麻痺する、手足がしびれる
- 冷え、のぼせ、冷感、熱感
パニック発作は「時」と「場所」に関係なく、突然不意にあらわれるもの。基本的には「このような場所では発作が起きやすい」という因果関係はほとんどありません。
しかし本人は、どうしても発作が起こった場所を避けるようになってしまい、行けない場所がどんどん増えて、最終的には一歩も外に出られなくなります。
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2)予期不安
パニック発作を何回か起こすと、そのときの恐怖が頭にこびりついて、
- 「また発作が起きるんじゃないかしら?」
- 「人前で恥をかいてしまうんじゃないかしら?」
- 「誰も助けてくれなかったらどうしよう?」
と、不安にさいなまれる状態を「予期不安」といいます。
パニック障害でなくても、誰でも失敗したり人前で恥をかいたりすると、「また同じことを繰り返してしまうかも?」と心配になりますよね。
でもパニック障害での予期不安は、その心配の度合いがとても強いのが特徴。パニック発作の症状がおさまっても「また発作が起きたらどうしよう?」と予期不安に悩み、予期不安がパニック発作を引き起こし、その発作がまた予期不安を…… と悪循環におちいる傾向があります。
予期不安で感じる主な感情
予期不安では、主に次のような感情があらわれます。
- 気絶してしまうかも?
- 取り乱したり錯乱して、恥をかいてしまうかも?
- 発作が起きても、誰も助けてくれないかも?
- この場所から、すぐに逃げられないのかも?
- 人前で吐いたり倒れたりして、恥ずかしい姿を見せてしまうかも?
予期不安の程度には個人差があります。ときどき感じるものから、いつも予期不安にさいなまれて仕事や家事などが手につかない、という状態まで程度はさまざまです。
予期不安はやや長く続くことが多く、パニック発作を起こしてから1ヶ月以上続くケースがほとんど。ひどくなってくると、パニック発作が起きた時のことを思い出したり想像しただけで、動悸が激しくなる、めまいがする、息苦しくなる、といった症状を感じることがあります。
なお、パニック発作はずっと起きていないのに予期不安だけが残っている、というのは珍しいことではありません。しばらくパニック発作が起きていないのであれば、「予期不安は消えにくいんだった。でも発作は起きてないからきっと大丈夫ね。」と理解して、心配しすぎないようにしましょう。
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3)広場恐怖
「以前パニック発作が起きた場所に行ったら、また発作が起きるんじゃないかしら?」という恐怖から、次のような場所を避けるようになるのが「広場恐怖」です。
- 逃げたくてもすぐには逃げられないところ
- 発作が起きたら恥をかく(と思っている)ところ
- 何かあっても、誰も助けに来てくれないところ
広場恐怖の具体的な場所
具体的には、このような場所があげられます。
- バス、電車、満員電車(特急など次に止まる駅までの時間が長いもの)
- 飛行機、新幹線
- 高速道路、トンネル、橋の上(特に車を運転中の場合)
- 人ごみ、混雑した場所
- 地下道
- 歯科、美容院など、比較的動きにくい場所
- エレベーター、コンサートホール、映画館(閉鎖された空間)
- 列に並んでいる時
- 一人でいる時
- 遠距離の外出など知らない場所への外出中
- 頼れる人がいない場所(その場所に長い時間い続けること)
広場恐怖が重症になると一人では外出ができなくなり、家族など頼れる人の付き添いが必要になってきます。
パニック障害の約4分の3の人が広場恐怖を発症する
広場恐怖は一般的に20代の人に発症することが多く、パニック障害の約4分の3の人が広場恐怖を発症するとも言われています。次のような流れで広場恐怖を発症する傾向があります。
「パニック発作」が何回か起きると……
⇒ また発作が起きるんじゃないか?と「予期不安」があらわれて……
⇒ 発作が起きたような場所に行くのを避けよう、と「広場恐怖」を発症する
広場恐怖の対策
症状が軽いうちは多少の不安を感じながらも必要な場所には行くことができます。それが症状がひどくなるにつれて行けない場所が増えていき、最終的には、一人ではどこにも行けない状態になってしまいます。
そうならないために、広場恐怖の対策として、無理のない範囲で 症状が軽いうちに不安を感じる場所にも我慢して行くようにしましょう。
パニック発作と場所には因果関係がないことを言い聞かせてください。そして不安なら、頼れる家族や友達に一緒に行ってもらいましょう。発作が起きなければ「ここは大丈夫ね」と広場恐怖の不安が1つ消えていきます。
次は 「パニック障害の原因」 についてお伝えします。
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パニック障害の原因
パニック障害の原因ははっきりとわかっていませんが、次の5つがおもな原因ではないかと考えられています。
それではこの5つの原因について、わかりやすく説明します。
1)神経伝達物質
神経伝達物質とは「脳の中」で神経と神経のあいだを行き来して情報を伝える物質のこと。
なんらかの原因でこの神経伝達物質が正しくはたらかなくなってしまうことがパニック障害の原因ではないかと考えられています。
特に、精神状態を安定させている「セロトニン」と「ノルアドレナリン」の2つの神経伝達物質のバランスの崩れが原因ではないかと考えられています。
不安をおさえるはたらきをする「セロトニン」の不足が不安にさせるのではないかと考えられていますが、逆に過剰に分泌されているのが原因という考えもあります。セロトニンは薬によって増やすことができますが、副作用への注意が必要です。
また、体や心に危険がせまったときに警報を出すはたらきの「ノルアドレナリン」が誤作動を起こすことで、何も危険が迫っていないのに「危険だ」という警報が発令されて、動悸や息切れ、手足の震えなどの症状があらわれるとも考えられています。
ノルアドレナリンについても、不足していることが原因という説と過剰なのが原因という説があります。
2)ストレス
ストレスは体や心だけでなく脳にとっても大きな負担。そのストレスで脳の神経伝達物質の数に異常が生じてパニック障害になる、と考えられています。
仕事や育児などの継続的なストレス、親との永遠の別れや恋人との離別といった喪失体験、仕事でのプレッシャー、夫婦の不仲で喧嘩ばかりの毎日、といったストレスは大きな原因となります。
パニック障害を引き起こす人は真面目で頑張り屋さんがほとんど。仕事や家事の手抜きをしたがらない傾向がありますが、無理せずに会社を休んだり、家事や育児も親や夫に手伝ってもらうなどして、負担を減らしていってください。
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3)遺伝
遺伝もパニック障害の原因のひとつ。
パニック障害になりやすい要素である「内向的な性格」。親がパニック障害の場合、その子供の約80%に「内向的な性格」が見られます。同様にその子供もパニック障害になる確率は、そうでない親をもつ子供と比べると8倍も高くなります。
ストレスに弱い体質を親から遺伝して、そこへ外的なストレスが加わってパニック障害を発症するのでしょう。ストレスに負けないように子供を強く育てていくことが大切ですね。
4)乳酸の蓄積(疲労)
パニック障害の人は疲労物質である「乳酸」が蓄積しやすい体質といわれています。
乳酸をパニック障害の患者に投与するとパニック発作と似た症状が表れますが、健常者に投与してもそのような症状があらわれるのはわずか10パーセント。はっきりとした原因は不明ですが、この乳酸が影響しているのではと考えられています。
血液中の乳酸の濃度が高くなることが原因という説もあれば、乳酸が脳に入って二酸化炭素に変化して脳幹にはたらきかけることで「体が危機だ」と勘違いして発作が起こるのが原因ではないかという説もあります。
5)カフェイン
カフェインのとりすぎもパニック障害の原因と考えられています。
カフェインの覚醒作用が血圧や心拍数を上昇させて、それがパニック発作をまねきやすくする、というのです。
また、カフェインは「アデノシン」という神経伝達物質のジャマをするといわれていたり、ビタミンやミネラルなどの栄養素を分解してしまうので発作が起こりやすくなる、という考えも存在しています。いずれにせよパニック障害の人はカフェインに過剰に反応してしまうのです。
麦茶、黒豆茶、ハーブティー、たんぽぽコーヒーなどのカフェインを含まない飲み物にかえるのもひとつの方法。チョコレートなどの嗜好品、市販の薬、炭酸飲料、栄養ドリンクの中にもカフェインは含まれているので注意が必要です。
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パニック障害の検査
パニック障害の検査はどのようにおこなわれるのでしょう?そこで、
- まずは何科を受診すればいいの?
- 病院(医師)の選び方は?
- どんな検査がおこなわれるの?
について説明します。
1.何科を受診すればいいの?
まずは内科や循環器科で、体に異常がないか検査しましょう。
パニック発作では、動悸、息苦しい、めまい、吐き気、など体に症状が出ます。この原因が体の異常にあるかもしれません。内科などでの検査で体に異常が見つからなければ、心療内科や精神科を受診しましょう。
心療内科とは「ストレスなど心の問題が原因となって、体に症状があらわれているもの」の治療をおこなう専門医。検査はおもに問診。症状を伝えることはもちろん、仕事、家庭環境、人間関係、食生活、何にストレスを感じているか、といった生活環境についてもしっかりと伝えましょう。
薬を使いたくない、カウンセリングを受けたいといった診療上の希望や、治療内容や薬の処方に対する疑問なども遠慮なく伝えて、医師と二人三脚で治療を進めましょう。
2.病院(医師)の選び方
早く治すためには、医師を心から信頼できるか、安心して何もかも話せるか、といったことがポイント。そこで医師の選び方として、4つの大切な点についてご紹介します。
(1) はっきりとした基準をもとに診断する医師。パニック障害に詳しくなくて誤診する可能性もあります。「あなたはどういう状態だからパニック障害なのか」、「パニック障害とは違うのか」 をはっきり説明できる医師を選びましょう。
(2) 患者の不安を受け止めて、疑問には丁寧に答える医師。医師への信頼は早い治癒につながります。
(3) 体と心の両面をみる医師。他人が見ても病気かどうかわからないのパニック障害。会社の同僚から 「病気でもないのに……」 とつらい思いをすることも。そんなストレスも理解してケアしてくれる医師を選びましょう。
(4) 治療方針をくわしく説明する医師。薬や精神療法を組み合わせながら、改善の度合いに応じて治療内容を変えていくのがパニック障害の治療。その進め方をくわしく説明し、互いに納得の上で治療を進める医師を選びましょう。
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3.検査の内容について
パニック発作が起きたからといって、パニック障害とは限りません。そこでまずは 「その症状がパニック発作なのかどうか」 の検査をします。
パニック発作と診断するためには 「体の病気が原因ではないこと」 が前提。内科で体に異常がないか検査します。体に異常がなくて、次の13のうち4つ以上の症状が突然起こって、10分以内に症状がピークになれば「パニック発作」と診断されます。
13の症状
- 動悸、心悸亢進
- 発汗
- 身震い、震え
- 息切れ感、息苦しさ
- 窒息感
- 胸痛、胸部の不快感
- 嘔気(吐き気)、腹部の不快感
- めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、気が遠くなる感じ
- 現実感消失(現実でない感じ)、離人症状(自分自身から離れている)
- コントロールを失うことに対する恐怖、気が狂うことに対する恐怖
- 死ぬことに対する恐怖
- 異常感覚(感覚麻痺、うずき感)
- 冷感、熱感
検査の結果 「パニック発作である」 と診断されたら、次に、「あなたの病気がパニック障害なのかどうか」 を検査します。
パニック発作が起きたからといって、パニック障害であるということにはなりません。体の病気や覚せい剤中毒などでも発作が起こるからです。そこで、
- 予期できないパニック発作がくりかえし起こる
- 最初にパニック発作になってから1ケ月以上にわたって、「また発作が起こるかも」 「おかしくなっちゃうかも」 といつも不安だったり、発作に関係して行動が変わった
- パニック発作の原因が、体の異常や薬物によるものではない
- ほかの精神疾患にあてはまらない
といった点において検査をおこないます。
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パニック障害の治療
パニック障害の治療は、「薬物療法」 と 「精神療法」 の二本柱でおこなわれます。改善の度合いに応じて、使う薬や療法を変えながら治療を進めていきます。
薬物療法
おもに 「抗うつ薬」 と 「抗不安薬」 の2種類が使われます。
「抗うつ薬」はパニック発作をおさえるもの。発作をおさえるはたらきは強いものの、飲み始めてすぐには効果があらわれないのに、副作用は飲み始めた頃からあらわれる、というデメリットがあります。SSRI (選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、三環系抗うつ薬など。
「抗不安薬」はいわゆる“精神安定剤”。不安感をおさえるので、予期不安やパニック発作に効果的です。ただ、副作用が強い、耐性や依存性や離脱症状がある、というデメリットがあります。効果は早くあらわれるので、パニック発作が起こった時に一時的に飲むかたちで使われます。ベンゾジアゼピン系抗不安薬、セロトニン作動性抗不安薬など。
「抗うつ薬」を継続的に飲みながら、発作が起きたときなどに一時的に「抗不安薬」を飲むのが一般的です。
精神療法
精神療法とは、薬を使わずに、自分の思っていることを伝えたり医師の話を聞いたりといった「対話」を通して治療すること。薬とちがって副作用がないので、薬を飲みたくない人や妊婦さんなどにとって安心な治療法です。
また、薬は症状をおさえるのが目的ですが、精神療法はパニック障害の原因のひとつである「物事のとらえ方・考え方」を変えていくが目的。おおもとの原因を取り除くことで、再発を防ぐ効果も期待できます。
支持的精神療法、精神分析療法、森田療法、認知行動療法、自律訓練法など。
※参考サイト:厚生労働省 e-ヘルスネット「パニック障害」、国立精神・神経医療研究センター~こころの情報サイト「不安症」、NHK健康チャンネル「突然、動悸や息苦しさが発作的に始まるパニック症。自分でできる対処法とは」
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